本研究では、現代のマーケティング・チャネルとして有力なフランチャイズ・システム研究の大きな課題である制度選択に関して理論的な枠組みとともに、実証のための操作化および新たな視点の提示を行った。 現代日本のFCには、明らかに高度なケイパビリティを主軸にして構築されているものがある。例えば、先行研究から高度なナレッジが必要とされることが明らかな、コンビニエンス・ストア、学習塾、情報ビジネス、不動産仲介など、ナレッジまたは情報そのものを伝授または販売する業態は、典型的なナレッジ業種である。これらは、本来的なビジネス・フォーマット・フランチャイズである。それ以外に、伝統的なタイプとして、クリーニング店などに見られるように、企業が特定の業者に対して自己の商標のもとで商品・サービスを販売する権利を与える「商品・商標等フランチャイズ」がある。従来研究では、これら二つの形態を区分せずに扱ってきた。チェーン全体への波及は出来ない。高度なケイパビリティを必要とするFCチェーンは、様々な実験を行い、例えば、CRMシステムを用いて仮説・検証を行うために、あるいはスタッフの養成のために直営店舗を必要とする。以上の議論を総合すると、チェーン本部の事業内容が高度なナレッジの伝播を必要とするか否かの問題は直営・FC比率の選択に影響力を有する。またこれからの課題の発見として、マルチ・フランチャイジー、あるいはメガ・フランチャイジーに関する問題がある。また、フランチャイズ研究は、専ら本部の制度選択を問題にしてきたが、加盟店側の制度選択、あるいは企業境界の決定問題が未知の領域として残されているとの課題認識をおこなった。 なお本研究の詳細に関する論文は、この秋に出版される研究書に収録される。
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