研究概要 |
本研究の目的は、プロスポーツ選手の現役引退に伴っておこるキャリア上の諸問題を、経営学的視点から明らかにし、第二の職業人生に対する望ましい支援の方法について検討していくことである。そして本年度は、年度当初の予定通り、(1)前年度の研究成果を含めた先行研究の再分析、(2)追加的インタビュー調査とデータの再分析、(4)成果の取りまとめと内外での公表を随時行うこと、の段階が実施できた。(3)質問票調査は準備を進めたので、実現可能性を検討しながら、次年度に行うようにしたい。その代わりに、アスリートの引退に関連して他の調査機関が公表している統計的データの分析に着手することができた。 本研究課題は元プロスポーツ選手のキャリア発達に伴う心理的諸問題を対象としているが、前年度からの調査の結果、現役時代の行動の傾向と周囲の人の属人的な要素が、引退に関する「内的キャリア」や支援に影響を与えることがわかってきた。この内容は、研究代表者が第12回世界スポーツ心理学会(the 12th World Congress of Sports Psychology, 2009, Marrakesh, Morocco)、ならびに、経営行動科学雑誌第22巻において成果公表することができた。また、この発表に端を発して国内外の研究者と意見を交換することにより、日本特有の要素が、我が国のアスリート・キャリアとその支援に与える影響について検討していく重要性を強く感じ取った。このうち日本の労働市場の動向による影響は、今年度すでに初期分析を行っており、来年度、関連する学会での発表が決まった。また、海外雑誌への投稿の準備も進めている。また、日本の高齢化社会への実践的貢献についても、引き続き検討の課題としたい。
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