本研究の目的は、企業における情報システム(IS)のアウトソーシングの現状分析をふまえて、ISソニシング戦略の立案や実行時における課題を検討し、とくに、ISソーシング戦略におけるIS子会社や企業間アライアンスの役割を理論的・実証的に明らかにすることにある。ここで、典型的なISソーシング戦略とは、IS業務を自社内でインソーシング(内製)するか、それともアウトソーシング(外注)するかという内外製(メイク・オア・バイ)に関する意思決定とそれにもとづく具体的なマネジメントの構想を意味する。 平成21年度は、とくにIS子会社のマネジメントの多様化現象を中心に企業におけるISアウトソーシングの取組みの現状を考察した。ISソーシング戦略の実際を理論的に検討すると、取引コスト経済学(TCE)と資源ベース企業観(RBV)の視座が補完的に機能するケースと相反するケースの存在が示唆された。そこで、企業におけるISソーシング戦略を規定する要因をより詳細かつ厳密に分析するために、質問票調査の実施を計画した。しかしながら、質問票調査の企画段階にて質問項目の内容の妥当性や明確性、測定尺度の精度などをプレビューした結果、見直しを要する項目がいくつか見出されたために、拙速を避ける観点から当初の研究計画を変更し、繰越(翌債)を申請することとした。したがって、質問票調査の実施とそこで得られるデータの統計解析・考察などの作業は平成22年度に行うことになった。
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