研究概要 |
本研究の目的は、企業における情報システム(IS)のアウトソーシングの現状分析をふまえて、ISソーシング戦略の立案や実行時における課題を検討し、とくに、ISソーシング戦略におけるIS子会社や企業間アライアンスの役割を理論的・実証的に明らかにすることにある。ここで、典型的なISソーシング戦略とは、IS業務を自社内でインソーシング(内製)するか、それともアウトソーシング(外注)するかという内外製に関する意思決定とそれにもとづく具体的なマネジメントの構想を意味する。 本年度は、企業におけるISソーシング戦略を規定する要因をより詳細かつ厳密に分析するために質問票調査データの統計解析を実施した。その結果、ISアウトソーシングの形態別差異にもとづく特徴の違いを析出するとともに、アウトソーシングマネジメントの今後の方向性に関して、プロフィットセンタ化の推進とIS子会社のアレンジメントとの間に有意な正の相関関係が存在することを明らかにした。また、ISソーシング戦略に対する取引コスト経済学(TCE)と資源ベース企業観(RBV)の複合的なフレームワークの有効性を検証し、両視座が補完的に機能するケースと相反するケースの存在を確認した。そして後者の場合には、企業は機会主義の脅威とそれに起因する取引コストの増大を回避あるいは抑制することを相対的に重視する傾向が存在することを見出した。すなわち、資源ポジションが優れている(劣っている)にもかかわらず,機会主義の可能性が低い(高い)場合にはアウトソーシング(インソーシング)が選好される傾向があるといえる。
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