研究課題
本研究は、激化する競争環境下における中小企業のIT戦略を支援するための情報システム・モデルを、オープンソース・ソフトウェアを用いて開発・研究することが目的である。また同時に、中小企業におけるオープンソース利活用時の問題点を解明することをも目指すものである。具体的には、構築と運用が容易でかつコストを抑えるために「オープンソースによる情報システム」を開発し、中小企業の情報戦略を支援するシステムとして汎用モデルを制作することを目指す。また、運用評価をもとに、中小企業においてオープンソースを利活用する際の問題点を分析し明らかにする。本年度は、オープンソースを用いた中小企業向けのトレーサビリティシステムに焦点を当てて研究を実施した。現在、電子タグや二次元バーコードなどの自動認識技術の実用化を背景として、企業におけるトレーサビリティへの取組みが進みつつある。製品に関するさまざまな履歴情報がサプライチェーン上において一貫して管理・参照されるためには、それらの情報を企業間で共有するための情報ネットワークやデータベースの整備が必要であり、その中心的な役割を果たすのがEDIシステムである。オープンソースソフトウェアをベースとして、とくに中小企業に適した分散型トレーサビリティシステムを提案する。そのために、まず、トレーサビリティに関する先行研究のレビューと質問票調査データにもとづいて、中小企業におけるトレーサビリティシステムの導入要因について探索的な分析を行った。つぎに、電子タグや二次元バーコードとEDIシステム、そして社内のバックエンドシステムとの連携の現状と問題点について検討した。そして、以上の分析に基づいて、オープンソースソフトウェアを用いた中小企業に適合的なトレーサビリティシステムのモデルを提示し、その実務的な含意を議論した。
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WSEAS TRANSACTIONS on BUSINESS and ECONOMICS Issue 1, Volume 6
ページ: 1-10