研究概要 |
本研究は3ヶ年計画で実施される.最終年度に当たる平成22年度の研究概要は以下の2点である. 第1に,企業事故の発生メカニズムを検討している先行研究の広範なサーベイを行った.特に,(1)心理学において有名な概念である集団思考(グループシンク)と(2)社会学において企業事故の代表的な研究であるVaughanの技術的逸脱の標準化,(3)経営学において企業不祥事の発生原因と防止策について提言を行う企業倫理研究について検討を行った.(1)の集団思考研究では,主に意思決定に焦点を当てた企業事故分析を行っていること,(2)の技術的逸脱の標準化では,現場における長期的・日常的な要因に注目していること,(3)の企業倫理研究では,発生メカニズムは前提であり,主に防止策に焦点を当てていること等が明らかになった. 第2に,企業事故研究の特徴の検討を行った,特に,従来の企業事故の先行研究に置いて回顧的(レトロスペクティブ)アプローチが採用されていることを指摘し,ハインドサイトバイアスが存在している可能性について検討した.検討の結果,従来採用されていた回顧的アプローチではなく,意図せざる結果アプローチを提言した.回顧的アプローチでは,事故を引き起こしていない理想状態を想定し,その状態からの乖離に注目して分析が行われる.これに対して,意図せざる結果アプローチでは,「当初の意図」と「実際の行為と結果」との乖離に注目して分析を行う. なお,研究成果を基にした著書を現在作成中であり,近日中に著書として公表する予定である
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