研究概要 |
企業経営者が直面する諸問題をリアルオプションという概念を用いて表現し動的分析を行うことが目的である。研究代表者は新しい数学的解法を開発する過程にあり、解法可能な問題の範囲を拡大しつつあるため、より現実に近い問題(意思決定の際のオプションが複数存在する場合、また取引の相手側にもオプションが存在する場合など)への取り組みが可能になっている。これにより企業経営のための普遍的提言を行うこと、また解の経済的含意を明らかにすることを重要課題として位置づけている。 22年度は1本の論文が国際的査読付ジャーナルに掲載された。これは転換社債を発行して設備拡張を行った場合、企業経営者(株主)はキャッシュフローが十分でないと判断した場合は破産を宣言して転換社債の保有者に経営権を委ねる選択を有する、そして転換社債の保有者は株主に転換することによって新たに経営者となるという選択を有する。この2つの相反するオプションをどちらが先に、それぞれどのタイミングで実行するべきかという問題を取り扱っている。 さらに、以下の3本の論文を完成し、査読付ジャーナルに投稿した。(1)金融危機に際して、資産価値が減少する場合に、資本増強策を開始するタイミングを計算する問題、(2)オプションを実行する場合のペイオフが2つの価格の関数として書かれる場合の問題、(3)価格が下方ジャンプする資産の場合のアセットマネージャの最適化問題。(1),(3)は、ジャンプを含むモデル、(2)は多次元のモデルであり、従来より解法困難とされている問題である。
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