本年度の最大の目的である、日本企業における組織能力構築と価値獲得に関する理論的枠組みを完成させることができた。その内容は、「日本企業のものづくりにおける価値創造の課題」として出版することができた。具体的には、組織能力構築のためには、組織能力を鍛えるための場を設定することがクリティカルであることがわかった。また、価値づくりにおいて最大の課題は、ものづくりにおいて、意味的価値を造りこむことであることがわかった。意味的価値については、未出版なので、業績には掲載していないが、一橋大学のワーキングペーパーとして「価値づくりの技術経営:意味的価値の創造とマネジメント」を公表した。上記の理論的枠組みを構築する上で、定性的調査を徹底的に実施した。主に、パナソニック(12日間)と日本電気(10日間)の2社において、組織能力の中身に関して、技術者および事業管理者に聞き取り調査を実施した。また、機能的価値のみしか創出できていない商品と意味的価値が創出できている商品との差異についても聞き取り調査を行った。意味的価値の創出方法については、消費財と生産財で異なることがわかった。消費財では重量級プロダクトマネジャーが重要であり、生産財では、顧客の現場を顧客以上に知ることの重要性が明らかにされた。 また、組織能力の構築に関する質問票調査を開始した。本年度は2社にお願いし、40以上のコア技術に関する組織能力のデータを収集した。その分析と論文執筆を開始している。組織能力の積み重ねの重要性に関して多くの示唆が得られている。
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