平成21年度の計画にそって、意味的価値と組織能力に関する理論枠組みの構築と、それに関したインタビュー調査、および質問票調査分析を実施した。意味的価値については、その概念枠組みを、価値獲得(価値づくり)の大枠の中に組み込んだ論文を出版した(「価値づくりの技術経営:意味的価値の重要性」)。価値獲得のマネジメントに関する新たな理論枠組みが構築できた。また、特に生産財に関する意味的価値については、概念的・実証的に深掘りをし、「生産財における意味的価値の創出:キーエンスの事例を中心」を出版した。潜在ニーズの発掘と、ソリューション提供が、生産財の価値づくりにおいては鍵を握る点が明らかになった。顧客の現場を顧客以上に熟知し、提案型の商品開発が求められる。組織能力に関しては、「持続的な競争力をもたらす技術とは:革新技術と積み重ね技術との比較」(IIRワーキングペーパーWP#09-04)を発表した。特許よりも、組織能力の積み重ねの方が、価値獲得の源泉として重要であることを、質問票調査によって検証した。その中でも、特に、技術者が長年にわたり試行錯誤をすることで、問題解決能力が高まり、それが企業の組織能力にとって重要な役割を果たすことがわかった。 企業の組織能力にとって重要な役割を果たすことがわかった。 価値獲得(価値づくり)にとって、意味的価値と組織能力こそが必須である点が、明らかになってきたことが平成21年度の最大の成果であった。本研究プロジェクトの後半にむけて、より具体的に意味的価値と組織能力が持続的な価値づくりに貢献するメカニズムを明らかにし、新たな理論体系を構築していくことが残った課題である。
|