ダイバーシティ・マネジメントは、多様な人材を活かすことを目的とする。よって、その対象には、障害者が含まれても当然と思われるかもしないが、多様な人材を活かす目的を「競争優位」や「組織パフォーマンス向上」のためと捉えると、ダイバーシティ・マネジメントと障害者雇用は、決して両立しうるものではない側面がある。なぜなら、障害者雇用は、それに取り組んだ瞬間から「倒産の危機」にあるといわれるぐらい、コストのかかる取り組みであるからである。そこで、本年度は、ダイバーシティ・マネジメントと障害者雇用の両立可能性を探るべく、障害に関する新学問分野である障害学、いわゆるディスアビリティ・スタディーズに関する基礎的文献のサーベイを行い、このディスアビリティ・スタディーズの観点から、米国のダイバーシティ・マネジメントを再解釈するという試みを行った。 次にダイキン工業の特例子会社であるダイキンサンライズ摂津、および宇部興産の特例子会社であるリベルタス興産のヒアリング調査を行った。また、リベルタス興産の働きかけで宇部興産グループ本体でも障害者雇用が進み出しており、うち2社に関してもヒアリング調査を行った。 まだ確定的なことはいえないが、これら一連の研究・調査により、障害者の雇用という観点にたてば、日本企業のダイバーシティ・マネジメントは、決して欧米企業のそれにまさるとも劣らない側面が十分にありうることを本年度は示唆した。
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