研究概要 |
本年度は、越後妻有アートトリエンナーレ、金沢21世紀美術館、四国九州アイランドリーグ、瀬戸内国際芸術祭、新屋島水族館に関する事例調査を実施した。そして、地域における文化的事業の創造にかかわるダイナミックな資源の活用・循環・創出を主導する社会的起業家の活動について、制度的アントレプレナーシップおよび制度的ロジックの側面から分析・検討を行った。 本研究において、我々は、本来相容れることが困難な制度固有の論理を持つ利害関係者集団が文化的事業を通じたプラットフォームの模索と形成に深く関与する中で、それぞれの利害を「相互資源化」することによりはじめてダイナミックな資源の活用・循環・創出が可能となるというフレームワークを導出した。このような協働にかかわるロジックの転換は、制度的アントレプレナーによる理想の追求と同時に事業にかかわる複数の異なるレベルの主体による組織フィールドへの意図的な深い埋め込みによって成立するものであった。 これらの成果の一部は、第25回欧州経営学会(2009年7月、スペイン)において、"Regio nal revitalisation in the case of the Echigo-Tsumari Art Triennial, Festival of the Earth"というタイトルで報告することが決定している。本研究は、制度的変革を行う集合的エージェンシーの既存研究(Wijen and Ansari,2007)が残したより詳細なミクロレベルの検討を行うことによって、埋め込まれたエージェンシーの課題に対して新たな貢献を行っている。
|