本研究課題は第3期科学技術基本計画が政策目標のひとつとして掲げる「世界トップクラス研究拠点」の形成に関連して、その基本的な要件を明らかにすることを目的としている。 当年度の実施計画においては、既往の調査結果等に基づいて研究分野ごとに欧米の卓越した研究拠点を選定し、各拠点の形成要因を分析するとともに、既往の調査結果から取得できない情報は、新たなインタビュー調査により収集することとしていた。この計画にしたがって、まず科学技術政策研究所が平成19年度に実施した「欧州の世界トップクラス研究拠点調査」の結果から分析対象となる拠点を抽出し、その形成要因を明らかにした。さらに新たな分析対象としてカリフォルニア工科大学を選定し、その人材、組織、戦略等の特質を明らかにするため、学長をはじめ関係者14名に対する現地インタビュー調査を実施した。 これまでの分析により、世界トップクラス研究拠点の特徴として以下の諸点が明らかにされている。すなわち、(1)世界トップクラスの人材が、拠点の求心力となるビジョンや研究プログラムの策定に関与していること、(2)外部から優れた人材を登用するための柔軟な研究交流制度が導入されていること、(3)優れた人材を集めるための条件として生活面やの支援を含む受入環境が整備されていること、(4)拠点内外の研究者が協力的に研究活動を推進する場として拠点が機能していること、(5)複数年にわたって立ち上げに充当できる多様な初動資金の基盤が存在していること、である。
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