本研究課題は、第3期科学技術基本計画が政策目標のひとつとして掲げた「世界トップクラス研究拠点」の形成に関連して、その基本的な要件を明らかにすることを目的としたものである。平成20年度から21年度にかけては、欧米の世界トップクラス研究拠点に関する事例情報を収集し、それらの情報に基づいて拠点の形成要因を抽出するための分析を行った。平成22年度は実施計画の最終年度に当たるため、引き続き事例情報の分析を進めるとともに、分析結果の総合的なとりまとめを行うこととした。特に、科学技術振興機構が刊行する『産学官連携ジャーナル』への論文連載を機に、世界トップクラス研究拠点の形成要因のひとつとして産学官連携活動を捉え直す視点から分析結果をとりまとめる作業を行い、政策的含意の導出を試みた。主要な政策的含意は以下の3点に要約される。(1)拠点の研究ドメインによって、重要な産学官連携のタイプは異なる。したがって、拠点形成に寄与するための産学官連携政策にはドメインごとに多様性を組み込む必要がある。(2)ある研究拠点が特定研究分野のライフタイムを超えて持続的に卓越したポジションに立つという状況は、絶えず新しい研究分野を創出するという戦略によってのみ可能となる。(3)新しい研究分野を創出するシステムには、研究領域が異なる研究者間のコラボレーションをコアにするモデルと、研究領域が異なる研究者を結集させる常設組織をコアにするモデルが存在する。
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