本年度は、研究期間の初年度であり、主にデータ収集を中心に研究活動を行った。まず、過去の既存研究の収集と整理を行った。サービスとはなにかについては、まだ学界で合意が得られていない。そこで、アーキテクチャの概念をサービス活動に適用するには、サービスをプロセスの視点から定義することが必要だということがわかり、Johnstonらの所説を中心にサービス定義をサーベイした。そのうえで、サービスを顧客に価値情報を転写していくプロセスだと定義することで、その転写される情報の構成をもってサービスのアーキテクチャと定義することとした。 次に、上記のサーベイで得られた視角に基づいて、日本のサービス業のデータ収集を行った。これは2つの部分に分かれる。ひとつは、既存文献の整理であり、小売業の海外進出に関する調査・研究を収集し、整理した。もうひとつは、研究代表者自身による現地調査を含めた一次データの収集活動である。後者については、小売業のイトーヨーカ堂、教育サービス業として公文教育研究会である。イトーヨーカ堂については、3月に中国の北京と成都の現地店舗を調査し、過去の調査をつき合わせることで、そのプロセスの変化を明らかにした。また、公文にっいては日本の本社へのインタビューを行った。公文については、次年度以降に、日本の教室および海外の教室の調査を行う予定である。この2つの事例は、ともに転写される情報を「作り込んでいく」事例である。そこで、こうした作り込み行為を海外に定着させて行くにはどうすれば良いのかが、次年度以隆の調査テーマとなった。
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