本年度は、研究期間の第2年度であり、初年度に引き続き、主にデータ収集を中心に研究活動を行った。特に、今年度は2回の中国調査を行った。9月に中国の上海、香港、成都の日系サービス業(イオン、ベネッセ、イトーヨーカ堂、伊勢丹、公文教育研究会)の現地調査を行った。また、3月にはイオン、イトーヨーカ堂、伊勢丹、公文教育研究会についての追加調査を行った。その結果、インタビュー記録、写真、ビデオなどの豊富なデータが収集された。 こうしたデータの整理・分析を行った。特に小売業では、複数店舗間の比較を可能にするように、食品などの同一機能間の比較を可能にするための写真のラベリング作業を中心として数千枚の写真やビデオの整理をした。その上で、店舗間での違いを析出していった。手法としては、いわゆるグラウンデッド・セオリーも用いて、複数店舗におけるアーキテクチャを構造化していった。 こうした1次情報に根ざした、サービス現場のアーキテクチャ記述は、これまで行われたことはないはずで、その点で本研究の意義があると考えている。特に、サービス現場は、製品アーキテクチャと異なり、安定性や可視性に欠けるため、固定的な構造として捉えることは難しいが、ある種の構造化に基づく安定した状態を析出することで、今後の更なる分析の基盤を作ることができた。また、こうした手法は、今後の他の産業や組織にも利用可能だと考えられる。
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