本研究は、海外、特に中国における本年度は、研究期間の3年目であった。合計2回の中国での現地調査を行い、直近の日経小売業の中国進出の状況を確認した。特に、2回目の調査では範囲を青島に広げ、いわゆるドミナント戦略に基づく、地理的拡大だけでなく、既存店舗のリノベーションが大きな課題になりうることを発見した。これは、日本型サービス・アーキテクチャの中国移転と中国化(中国独自のアーキテクチャへの変異)の同時進行というダイナミズムに加えて、時間軸においてさらに変異するということを意味し、より複雑なマネジメントを必要とする。 こうした実態認識を踏まえ、本年度の後半では、新たなモデル構築を模索した。まだ、十分ではないが、母国と現地の相互作用を超えたモデルを提示することにより、新たな研究の知見をもたらすことができればと考えている。 さらに一部の日本企業にとって、中国進出にあたり、中国以前に進出していた国の現地法人経験者が大きな役割を果たしているということもわかった。これも多国間の相互作用をモデル化するという意味で、重要である。次年度は、こうした点も踏まえ、中国以外のアジアの海外進出にも注意を払う予定である。 また、これまでの研究データに基づき、組織学会研究発表大会において「ANTによるサービス現場の分析」と題する研究発表を行った。
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