本年度は、引き続き現地調査を中心に研究を実行した。主な調査地は、マーレシアおよびタイ、ベトナムである。マレーシアおよびタイは、日系企業の進出が早くから行われ、小売フォーマットとしてのアーキテクチャは、ある程度確立していた。しかし、それは固定的なものではなく、むしろ試行錯誤の連続であったことが現地調査で判明した。一方で、こうしたアーキテクチャの確立は、店舗展開の効率化をもたらし、拡張スピードに影響を与えていることもわかった。 こうしたアーキテクチャの確立は、他方で企業戦略にも影響を与えている。実際、ある種の企業は、日本本社からの直接統制ではなく、アセアン本社を設立し、アセアン諸国への進出をコントロールしようとしている。これは、戦略の機動性を向上させることにつながるが、その前提として小売フォーマットがある程度固まったからだと考えられる。 ベトナムにおける日系小売業の進出は、現地企業との合弁によるコンビニエンス業態が主たるものであるが、今後、スーパーマーケット等の他業態の進出も計画されている。さらに、ラオス、カンボジア、ミャンマーなどの地域への進出も計画されている。こうした進出計画の状況を確認することができた。また、進出形態も、これまでは、単独または現地合弁企業による進出で主たるものであったが、M&Aなど多様な進出形態を取るようになってきている。これは、複数アーキテクチャのポートフォリオとして海外進出を考えるようになったということを意味している。 これまでの日系小売業の海外進出は、比較的スローペースであると言われてきたが、スピードを増しつつあるといえる。こうした、進出スピードとアーキテクチャとの関係を明らかにすることが今後の課題となる。
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