本研究は、サービス業における企業間の差異をアーキテクチャの視点で分析するものである。特に対象を小売業に限定し、また、まず母国の異なる小売業が多く進出している中国をフィールドとすることで、同一環境におけるアーキテクチャの違いの影響を明らかにした上で、アーキテクチャの決定要因としての環境について分析を行う。 本研究の意義については、以下の点が考えられる。まず、アーキテクチャ概念の非製造業への拡大である。このテーマについては、幾人かの研究者が取り組んでいるが、まだ統一的なフレームワークには熟成していない。そこで、本研究で、このフレームワーク構築の一助としたい。次に、小売業の新たなる分析視角の提示である。アーキテクチャ概念がフレームワークとして有用であることを示すためには、特定の業種において、この概念を用いることで新たな分析が可能になることが必要である。小売業においては、ローカルなコンテキストに依存しない概念としてアーキテクチャを用いることで、新たな分析が可能になると考えている。また、小売業への適用を通じて、この概念を洗練させることで、他のサービス業への適用可能性も高まると考えられる。最後に、実務上の示唆として、サービス企業が自社の戦略を構築、実行する際に、アーキテクチャの選択を考慮することにより、より適切な戦略を選ぶことが可能になるだろう。
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