研究初年度である平成20年度においては、企業内紛争解決システム全般にかかる国内外での資料収集と当該課題に関する分析枠組の策定および理論枠組の検討を中心とした。 6月の米国における国際学会参加により、共通項の多い調査対象をもつ欧州の研究者チームとの議論により、当初の計画では欧州はフランスのみに対象が限定されていたものが複数国に拡充できることになった。またこの出張では本研究領域の権威であるS. Goldberg氏より、米国企業における制度設計の史的側面と昨今の運用にかかる資料収集および聞き取り調査企業へのアクセスに関する助力を得ることができた。 9月にはフランスESSEC経営大学院を拠点として、フランス企業(国営を含む)の紛争解決手続に関する資料収集とスキル開発のための教材・教授法研究を行った。日本と社会制度と労働争議の風土が異なる地域での状況はわが国の制度設計とスキル開発に示唆に富むものとなった。 国内においては、一昨年まで参加していた調査プロジェクトの大規模サーベイの結果が出版されたことで、本研究に活用できるデータの質と量を拡充できることになった。企業での聞き取りのなかで、中国で製造、営業している日系企業とのアクセスが生まれ、現地における複数社の複数の事業所において聞き取りを行う機会を得た。 組織的公正にかかる文献および調査レビューを進めているがその一部は、学会規模ではないものの、名古屋大学大学院法学研究科における法社会学研究会において報告した。
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