過去2年間の研究成果を踏まえ、特に次の2点に重点をおいて調査を進めた。 第一は企業内紛争解決のスキル開発のためのフレームワークとエクササイズを、実務家および実務経験者を対象として実施し、データを取得し、その効果性を検証する。このスキルを紛争当事者の立場からのものと、解決のためのメディエイターやファシリテイターなど第三者的な立場のものとから検討する。これらについては当該年度内に、専門職大学院4校、1国内企業においては日本語で、EUの管理職対象では英語で、同一の教材によるトライアルとデータ収集を行うことができ、現在データを分析中である。 スキル開発については企業内紛争の性質の多様性をかんがみ、7月の国際学会出席に際して法学および労使関係領域の専門家、認知心理および文化心理の専門家、そして公共領域における紛争解決の専門家からの知識の収集と最新の教材・教授法の習得に努めた。 第二は企業内紛争解決の制度設計に関する最新動向資料の追加で、昨年機会を得たフランスESSEC経営大学院での教育・研究の期間に培うことのできた欧州のネットワークを活用し、EU諸国特にフランス、ドイツ、ベルギーについて調査を進めた。とりわけフランスでは在仏日本企業も含む労使紛争の発生が続いており、実践的な含意のある資料が得られた。さらにこの枠組みから、中国でオペレーションを行っている日本企業をめぐり頻発した労使紛争について、当該研究の応用可能性が高まり、制度設計とともにスキル(技術)開発に関する調査対象に中国の事情を組み込むという課題に取り組みだした。
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