組織行動の研究では、仕事への満足や動機づけといった個人変数が一般に従属変数となり、独立変数としては、職務の自律性などの個人の仕事の特性や、職場の人間関係に対する個人の認知評価、その個人の仕事への人事評価、個人の地位や資格などの人事処遇などの個人の変数が主に取り上げられてきた。しかし、もし、個人が所属する職場によって満足度が大きく異なるのであれば、それは、個人の要因ではなく職場というグループレベルの要因によって変化していると考えられ、その検証を行なわなければならない。 本年度の研究では、従業員満足に影響する変数のうち、職場における上司とメンバーの相互作用の特性にかかわる変数や、職場での評価方法の全体の傾向にかかわる変数については、個人レベルのみならず、職場というグループレベルでの影響があることを、すべての従業員に対して目標設定と成果の評価に基づく人事評価が行なわれている製造業A社の社員を対象とした調査により検証した。調査により収集した質問回答データについて、グループレベルの変数はグループレベルの変動、個人レベルの変数は個人レベルの変動に照らしてその影響力を測る階層的な分析の手法であるHLMを用いた結果、グループレベルの変数である「手続きの公平さ」が、個人レベルでも効果があるだけでなく、グループ変数としての効果も見られた。評価における手続きの要因は、評価者と被評価者の個別の関係であるだけでなく、職場レベルで差がある変数である事が実証された。これにより、手続きの要因は個人の問題ではなく職場の問題としても検討すべきことがあきらかとなった。
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