平成22年度は、パートタイム労働者と正社員について組織における処遇と評価およびその手続きが公正さの認知と処遇や評価の受容におよぼす影響の差異について、前年度までの研究を元に調査票を作成し、データを収集して分析を行なった。調査において、パートタイム労働者を含む非正規の従業員については、主にインターネットを用いたWeb調査によりデータを収集した。正規の従業員については企業の労働組合などの組織を通じて調査票を配布してデータを収集した。データの分析では、まず因子分析を用いて主要な独立変数、従属変数の測度を確定した。独立変数と従属変数間の関係は、それらの測度を用いた概念間の関係として主として回帰分析を用いて検討した。分析の結果、次のことが明らかとなった。評価の受容や満足について正規従業員では、上司からの評価そのものの高さと評価結果が公正であることが主要な要因となっていた。すなわち、評価そのものが満足の中心となっていた。非正規従業員では、評価が公正であることが主要な要因である点は共通であったが、人事評価制度の説明や仕事における上司の指導力の高さ、同じような仕事をしている人と比べたときの相対的な収入の高さが評価の受容や満足に影響していた。つまり、非正規従業員では、公正さが重要である点は共通しているものの、上司の指導力など評価そのもの以外の要因が満足にかかわっていることが明らかとなった。これについては、非正規従業員の評価への見方は正規従業員と違ってまだまだ多様な要因によって影響されやすいと見なすことできるが、その一方で、評価について非正規従業員は正規従業員とは異なった側面に注目しているという解釈もできる。これらについては更なる研究が必要と考えられる。
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