企業、大学および公的研究機関でおこなわれる科学研究、特に基礎研究については、その大半が組織あるいはチームでおこなわれているのにもかかわらず、先行研究では分析対象を研究者個人とし、その属性ないしモチベーションと個人業績との関係のみが論ぜられてきた。しかし、組織あるいはチームとしておこなわれる研究の業績は、必ずしも研究者個人の業績の総和にはならない。また、その組織的研究の組織およびプロセスは多様であることが想像される。これらの背景より、以下の課題を設定して「組織レベルでの研究生産性を決定する要因」にアプローチした。 「基礎研究の組織は、どのようにマネジメントされているのか?」について、先行研究および公刊資料のレビューをおこなうとともに、研究者へのインタビュー調査をおこなった。それらから得られたのは、次の興味深い示唆である。研究チームのパフォーマンスが何に現れるかについては、論文および資金獲得状況以外に、「若手研究者が、その研究チームの次に、どの程度のポストを得ているか」という“キャリアパスとしての研究チーム"という視点が得られた。また、研究チームのパフォーマンスに影響を与える要因として、「研究者のバックグランド(専門分野)の多様性」が指摘された。また、「職場の雰囲気、人間関係」といった衛生要因も指摘されている。これらの新たな要因を考慮に入れた概念枠組みを作成し、平成21年度の研究をおこなっていく予定である。(当初計画していた「研究現場のフィールドワーク」については、協力先との調整がつかず、延期することとした)
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