組織の業績基準が不確実・不安定であることは組織有効性にとって好ましくないと一般的には思われがちであるが、そのような状況がむしろ組織有効性に寄与するというのが逆説的業績モデルの考え方である。本研究の目的は、このモデルを日本企業についてマクロ(国)とミクロ(個別企業)の2つのレベルで検証することである。今年度は、マクロレベルでの検討を行うため、多様な業績指標を歴史的に比較できるという点から、マスコミの記事を使って業績指標の重要度の変化を探索するとともに、既存のデータベースに基づいて業績指標間の関係を検討した。その結果、(1)数多くの測度が存在し、かつ増加している、(2)支配的な測度が常に変化している、(3)業績測度の間の相関が低い、という3つの仮説のうち(2)と(3)がほぼ支持された。以上の結果から、逆説的業績モデルの想定する業績指標の「逆説的」状況は日本企業においても一定程度確認された。この結果は、経営行動科学学会第12回年次大会において発表された。また、ミクロレベルでのモデル検証を行うための準備として、文献検索と利用可能なデータベースの探索を行った。
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