本研究は、障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社を調査し、知的障害者の職業能力を活用する仕組みについて明らかにする。また、保護的環境で障害者を雇用する就労施設についても検討する。障害者の能力を生かすための組織内の仕事の再編成の方法、特例子会社の組織・業務内容・作業を行う際の工夫・支援の方法・採用方法・評価・報酬について検討する。さらに、「分業の利益」を検証し、特例子会社が親会社の経営にどのように寄与しているのかについて分析を試みる。 平成20年度は、特例子会社へのインタビューにより、金融・小売・製造・情報通信の4業種について、「親会社の仕事の洗い出し→業務の再編成→仕事の切り出し」の仕組について調査を行った。金融業のA地方銀行は、手形や小切手の印刷、伝票の印刷などかつては、事務サービス子会社で健常者が行っていた仕事を請け負っていた。B地方銀行においては、同様に事務サポート子会社が行っているATMの清掃の業務を請け負うことを検討していた。小売業では、C百貨店が、それまで親会社の店舗の正社員や契約社員が行っていた、包装用のリボンや箱の製作および組立、伝票への押印、値札の製作、クレジットカード伝票の仕分けなどの仕事を請け負っていた。二輪車などの部品を製造するD社では、生産設備を工夫することで、健常者が行うのと同様の品質をもつ部品を製造していた。情報通信業のE社では、正社員が行っていた給湯室の清掃を請け負っていた。 必ずしも親会社とそのグループ企業で行う必要のない仕事を複数見出し、能力開発して雇用を生み出していた。親会社等の仕事の一部を切り出す仕事は、親会社の仕事をよく知るベテランが行い、能力開発には障害の特性や障害を補う方法を知る専門家が支援していた。
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