本研究は、障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社を調査し、知的障害者の職業能力を活用する仕組みについて明らかにする。また、保護的環境で障害者を雇用する就労施設についても検討する。障害者の能力を生かすための組織内の仕事の再編成の方法、特例子会社の組織・業務内容・作業を行う際の工夫・支援の方法・採用方法・評価・報酬について検討し、「分業の利益」を確認し、特例子会社が親会社の経営にどのように寄与しているのかについて分析を試みる。 これまでの特例子会社に対するインタビュー調査から、知的障害者が担える仕事をマネージャーあるいは経営者が把握した上で、親会社から障害のある従業員に適しており、かつ親会社に寄与する仕事を切り出していた。そこで平成21年度は、親会社から仕事を獲得する際に重要となる障害のある従業員の能力開発を重点的に調査した。 知的障害者はこれまで指摘されてきた「単純反復的」仕事のみならず、量産組み立て職場において、重要である「検査」と「段取りがえ」という判断をともなう仕事も担う者が存在した。簡単な仕事から次第にむつかしい仕事に移るキャリアの存在が確認でき、能力開発の方法はOJTであり、不具合製品が発生した場合、職場で原因究明のための話し合いが、健常者とともに行われていた。 この研究の内容は、日本キャリアデザイン学会の研究誌「キャリアデザイン研究」に投稿済みであり、9月発行刊に掲載される予定である。
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