本研究は、障害者を雇用することを目的に設立された特例子会社を調査し、知的障害者の職業能力を活用する仕組みについて明らかにする。また、保護的環境で障害者を雇用する就労施設についても検討する。障害者の能力を生かすための組織内の仕事の再編成の方法、特例子会社の組織・業務内容・作業を行う際の工夫・支援の方法・採用方法・評価・報酬について検討し、「分業の利益」を確認し、特例子会社が親会社の経営にどのように寄与しているのかについて分析を試みる。 平成20年度と平成21年度に行ったインタビュー調査で明らかになった点について、平成22年11月にアンケート調査「特例子会社における知的障害者の能力開発と雇用管理に関する調査」を厚生労働省が発表した平成22年4月末特例子会社278社に実施し量的な把握を試みた。その結果、雇用管理については、仕事能力や成果を反映した賃金体系、職場内Off-JT、職場内でのOJTとジョブラダーは少なからず実施されていた。しかし、「熟練」形成に至っているのは少数例であった。親会社以外に販路を開拓している企業も少数派である。職場内で「出来なかったことができるようになる」能力形成があるのか、「最初からの能力差が現れる」のか?について結果は、「単純反復的な仕事を続ける層」と「同一の作業の中で難度の高い仕事に移動するなど、ある程度のところまで到達する層」と少数ではあるが「熟練形成へと至る層」の3段階あると考えられる。 障害のない従業員の仕事の一部(比較的平易で単純な仕事)について担い一定程まで技能も向上する。多くの企業で親会社から仕事を受注し、黒字化している企業も少なくない。障害のない従業員と知的障害のある従業員が互いに得意な仕事に従事する分業により、親会社に分業の利益をもたらしていると考えられる。
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