本研究課題の目的は、日本と中国との間の共同プロジェクトの実施過程において日本側と中国側の各組織のリーダーもしくは実施チームのメンバーがプロジェクトに対して描くイメージや考え方のギャップが生じる原因を探求し、こうしたギャップによるプロジェクトの不成功を未然に防ぐためのマネジメントをいかに構想したらよいかを具体化することにある。平成20年度は、民間企業もしくは政府が主体となり、そこに大学・研究所・学会等が介在して展開される日中共同プロジェクトを中心にして、基礎的な聴き取り調査と関連文献・資料の収集を行った。結果の概略は以下の通りである。 (1)日中双方の組織に独特な思考方式があることをめぐって、双方のリーダーとコアメンバーが互いの思考方式の違いを十分に理解していない場合、すでに共同プロジェクトを立案する前段階においてコミュニケーション・ギャップの原因を生み出している可能性がある。ここでいうところの思考方式については、各組織の背後における上部機関の思考方式を含めて考察する必要がある。 (2)他方、双方のリーダーとコアメンバーが互いの組織の独特な思考方式を十分に理解し、かつ通訳上の障壁が大きくない場合は、共同プロジェクトの立案過程におけるコミュニケーション・ギャップを基本的に克服することができるが、当該リーダー等の組織内での立場や上部機関との関係によってはプロジェクト遂行に必要な後ろ盾が不足するために具体化が頓挫する可能性がある。 これらの結果を踏まえ、平成21年度は、研究対象の日中共同プロジェクトに関わるキーパーソンや関連する人々に対する具体的かつ発展的な聴き取り調査を中心にして研究を進める予定である。
|