研究概要 |
2009年度は,SPAのグローバル総流通に関わる文献の収集と整理,いくつかの企業へのヒアリング,SPAの前提となるグローバル・マーケティングについての著述を行った。その結果,SPAの競争優位性は単一のものではなく,企業によりさまざまであることも理解できた。ZARAやH&Mなどは「ファーストファッション」などと呼ばれているが,ユニクロにはその呼称は妥当しない。ZARAやH&Mは延期に力を入れる企業で,ユニクロは投機をうまく活用する企業である。各企業の目指す方向の違い,対象顧客の違い,SCMの構造の違いなどが,彼らの競争優位性を形作っている。 パリのオペラ座付近には,上記3者が軒を並べるように店舗展開しているが,顧客層を見るとかなりの違いが見られる。ZARAやH&Mには20代・30代の若い女性が多いのに対し,ユニクロにはかなり年配の男女が多い。ユニクロは著名デザイナーのジル・サンダーと提携した「+J」をインハウスで販売しているが,必ずしもそれだけが顧客層の違いではなさそうである。 モスクワのユニクロは,何度かの遅延の後,2010年4月2日にオープンした。パリのオペラ座店同様,駅近の優れた立地にあり,現時点でも好調なようであるが,主として商品を中国からロシアに輸入するそのSCM構造が開店がスムースに行かなかった一つの理由でもある。SCM構造をどのように組み立てるかは,国によっては,各社の店舗展開にも影響を及ぼすであろう。
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