平成21年度は、短時間勤務制度を利用する部下を持つ管理職の制度に対する認識(「積極的評価」と「否定的評価」)に影響を与える要因、ならびに認知がリーダーシップ行動に与える影響を取り上げた論文を作成した。短時間勤務制度導入は従業員への肯定的影響を目的とするものであると管理職が認識することが、「積極的評価」を高め、「否定的評価」を低めることが確認された。また短時間勤務者の勤務時間が短いことが「否定的評価」を高め、短時間勤務可能期間が短いことが「積極的評価」を高めることが確認された。これらのことから短時間勤務制度は「なんらかの理由で勤務時間を制限せざるを得ない正社員を一時的に支える制度」という一時的かっ緊急避難的な制度である場合に、管理職は「肯定的評価」をすると言える。 一方、彼らのリーダーシップ行動(「達成圧力」「配慮」「コンフリクトへの対応」)に関する分析からは、管理職が短時間勤務制度に対して「積極的評価」の重要性が確認された。ただし、「否定的評価」が「コンフリクトへの対応」を強化することから、「否定的評価」が常に好ましくない影響を与えるとは限らない点に注意が必要である。さらに重要なことは、部門にとってリスクにつながるという認識をもたらす要因も、リーダーシップ行動に影響を与え、その影響力は、制度への認識と同等、場合によってはそれ以上の大きさを持つことである。これは、「制度への評価」の重要性を損なうものではないが、制度運用上の主要な担い手である管理職に注目する際に、制度への理解ばかりでなく、短時間勤務制度が内包する、彼らがリスクと認識するような要因にも焦点をあてる必要性を指摘するものである。 また、部下が受けたリーダーシップ行動を明らかにすべく、部下の短時間勤務制度の利用経験等の違いによるリーダーシップ行動の違いを比較するために新たな調査を実施した。
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