本研究は、チーム生産に伴うただ乗り問題を解決する方法として、チーム内における規範や凝集性といった共通の信念や慣行が、成果を生み出すためにいかに有用であるかを示すことにある。すなわち、チーム内の一人が規範となっている努力水準の実行を怠る場合、規範からのその逸脱者はチーム内の同僚からの圧力を感じる。逸脱者に課される制裁は、必ずしも金銭的なものとは限らず、説得、批判、追放、ときには肉体的な処罰という形をとることもある。このような慣行・制度がいかにチーム生産におけるただ乗りを防ぐためには有用であるかを示すことにある。 特に、本年度においては、最適な課業配分および資産活用の優先権の階層構造について考察した。すなわち、企業組織ないし経済社会は、経済主体へどのように課業を配分するのか、また、経済主体に対しどのように資産活用の優先権を与えるのかについて考察した。企業組織ないし経済社会における重要な課業の一つは、全資産を一体化して活用するコラボレーション、あるいは、単一ないし一部の資産を結合化して活用するスペシャリゼイションである。そして、それらの課業は、個々の経済主体に配分されるものである。他方、経済主体は、配分されたコラボレーションないしスペシャリゼイションの課業を達成するため、必要な資産を活用する権限を与えられる。資産が稀少であるとき、企業組織ないし経済社会は資産活用の優先権の階層構造を決めようとする。そして、結局、企業組織ないし経済社会は、総期待価値を最大化するように、課業配分および資産活用の優先権の階層構造を決定するということが明らかになった。
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