本研究では、日本の製造企業が海外進出し生産活動を現地化するために、製造職場の中間層がどのような役割を果たすのか。日本企業の製造現場中間層の独自の役割を国際的な視点から明らかにすることを課題としている。そこで今年度は、調査対象国であるスウェーデンで工場調査と労使関係などについて調査を行った。 調査では、スウェーデン企業を買収した日系A社を訪問し、ヒアリングを行った。それによると、日本側から提起された製造ラインの直線ラインへの切り替えについてはスウェーデン側も多くの利点があることを指摘していた。また、日本的生産管理の手法であるアンドン、作業開始時及びシフト間での打ち合わせ会、問題解析手法としての5wなどの導入についても導入のメリットを認めており、日本的製造ノウハウの導入には好意的であった。 A社の現地化で特徴的な点は、製造ラインの変更、日本的管理手法の導入に際して、日本、スウェーデン両サイドともきわめて慎重に検討を行い、導入を進めたことである。これは日本側の管理スタッフの姿勢とスタンスが大きく影響している。また、受け入れ側であるスウェーデン側班長、職長=製造職場中間層のチーム方式やこれまでの経験が、日本的生産管理方式の導入にプラスに作用している点である。現地化の進展は、進出先の管理者にどのような管理上の情報が蓄積されているのか、この点が新たな管理方式を受容できるかどうかの点では大きな影響を及ぼす、という印象をもった。来年度は、日本的管理方式を実際に導入・活用する際、どのような新たな知識や要素が必要なのか、より詳細な検討を行いたい。
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