(1) 研究課題:本研究のねらいは、日本企業が国際展開を行う上で欠かせない生産職場における管理分業とローカライゼーションがどのように進んでいくのかを日系企業の進出先でのヒアリング調査をもとにして、そこで生じている問題点、課題を明らかにすることである。比較の精度を上げるために、ヒアリングでは現地で活動する自動車関連の日系企業と進出先ローカルメーカを訪問し、日系メーカーとの比較分析ができるよう心がけた。ヒアリングでは、工場現場の生産関係の技術者、およびマネージャークラスにヒアリングを行い、それぞれの工場での役割分担を明らかにすることを念頭に各工場、および関連研究機関への訪問要請を行った。 (2) 研究の成果と意義:今回の調査でもっとも注目された点は、日本企業の製造現場組織が備えている独自の組織機能、「中間調整機能」の検出であった。「中間調整機能」とは、生産職場に存在する作業管理、生産管理をすすめるために生じる職域、職務間で生じる分業の調整機能を指す。海外日系企業での調査では、日本本国に見られるような中間調整力は充分に発揮されているとはいえない。それは、中間調整に必要なオペレーター側からの協力、日本エンジニアの負担など、さまざまな要因が想定される。(3) とくに、製造象技術職の役割は、生産上での技術情報と作業情報とを結びつける上で重要な位置を占める。この製造技術は、日本独特の職種であり、海外進出は彼らの役割に依存していることが多いことを明らかにしたことも、本研究の大きな意義である。今後の課題としては、日本人技術者の育成とその海外への人材移転の流れをいっそう見極め、日本のもの作りの基盤がどのように海外へと移転されるのか、鋭意調査を進めたい。
|