中小企業政策の評価研究を行うにあたって、平成20年度は企業データ・ベースの構築に力点を置いた。具体的には、欧米諸国で標準化しつつある定量的な中小企業政策評価を戦略・マネジメントの観点から実施するために、大規模な郵送アンケート調査を実施した。東京商工リサーチの企業データ・ベースから企業設立後10年程度の製造中小企業約5200社を抽出して、そこに約80項目からなる郵送質問票を送付した。その結果、約1ヶ月の回収期間で概ね2割の有効回答を得ている。なお、郵送アンケート調査の質問票の作成に際しては、海外のBusiness Links調査票(英国の代表的な中小企業支援政策の評価研究のための調査票)や筆者らが国内で実施したこれまでの創造的な中小企業に対する調査票を参考にしている。また、英国や韓国の中小企業支援政策担当者とのディスカッションやそこから入手した各種論文・報告書・資料も支援効果と課題に関する知見として大いに参考にした。同時に、日本の中小企業経営や政策の実態に詳しい研究者やコンサルタントとの意見効果を通じて政策分析に関わる分析視角やマネジメント研究情報について貴重な知見を得ることができた。 平成20年度の研究では、中小企業政策の評価・分析のための基盤的データ・ベースの構築とこれまでの先行研究から導き出された課題や仮説について一定の仮説を導き出すことができた。次年度以降では、ここで構築した中小企業データ・ベースを加工しつつ、中小企業政策と戦略・マネジメントとの関係性について分析を深めていきたい。
|