研究概要 |
企業間ネットワークにおける信頼形成過程に対する参照モデルを構築するための準備作業を展開してきた。そのさいに,社会的構成の議論や制度化,アクターネットワーク理論などの視点を手がかりに,予備的考察を行ってきた。その過程において,方法論的意義に注目した論考として,「解釈主義研究の射程」を発表した。そこでは,解釈主義的方法に立脚することにより,従来ともすれば看過される傾向が強かった情報ネットワークの社会的構成や組織慣性などを考察するための手がかりが得られる点を議論した。この枠組みを援用することにより,戦略形成過程におけるネットワーク参画主体の間の信頼醸成のメカニズムを記述するための参照枠組みを構築できると期待される。加えて,企業だけでなく行政を含めた産業支援ネットワークにおける行為主体間の信頼形成過程および戦略形成(ないし戦略転換)過程について,上述の「解釈主義」の視点に加えて,地域性(あるいは,ドメスティックな論理)を手がかりに,事例研究を行った(神戸市の「北野工房のまち」の事例)。そこでは,行為主体のネットワークが織りなす「意図せざる結果」の中で,既存の事象や概念の意味転換(翻訳過程)を通じて,より求心力の強い信頼性が醸成される過程を明らかにした上で,ネットワークにおける意味創造(転換)メカニズムに,歴史性(経路依存性とコミットメント)や地域性(ドミナントロジック)が深く関わっている点について,事例を通じて明らかにした。
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