本研究では、前年度(平成22年度)に交付された直接経費を用いて実証実験用Webサイトを作成し、本年度(平成23年度)に交付された直接経費を用いてネット調査(会場実験)を行った。このような方法を用いた理由は、実証実験用WebサイトのURLをネット調査モニターに公開し、回答者が自由にこれにアクセスして回答を入力する方法では、本研究で用いた実験のように、画面に呈示されるさまざまな情報を注意深く読み、考えて回答するようなものでは、良質なデータが得られないからである。(平成22年度の実績報告書に記載したとおりである このような判断から本年度は、マクロミル社のモニターを用いて会場実験を行った。プレ調査で温泉に関して関心が高い回答者をスクリーニングした上で、本実験では5つの温泉の宿泊施設に関する情報を呈示し、各被験者が選択した温泉施設に先に宿泊したとする架空の他者によるクチコミを生成し、これを見る前後における被験者の当該施設に関するさまざまな態度を測定し、その変化を実験群で比較した。その際に、結合条件を含む1つのクチコミを見る実験群(質的条件)と、単に当該温泉施設に関する肯定的および否定的な体験を含むクチコミを見る実験群(量的条件)とを設定し、その態度に及ぼす影響を比較した。 実験の結果、否定的・量的条件(否定的なクチコミが3つと肯定的なクチコミが2つ)の被験者を除く3つの実験群(肯定的・量的条件、結合・類似条件、結合・非類似条件)間では、被験者の態度に及ぼした影響に差がなかった。このことは、多数のクチコミによる影響を同程度の強さの影響を、ただ1つのクチコミを見ることによっても、閲覧者は受ける場合があることを示している。一般に1つのクチコミより多数のクチコミによる影響の方が、閲覧者により強い影響を及ぼすと信じられていることに対して、結合条件を含むクチコミは、単一のクチコミでも多数のクチコミと同程度の影響を及ぼすことが示され、興味深い知見が得られたと考えている。
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