消費者の製品評価に関する認知空間を求める分析モデルは存在するが、消費者の製品選好は主観的な感性に依存すると考えられる。そして認知と選好という2つの空間を結びつける研究はマーケティングにおける重要なミッシング・リングであった。このリンク関数を研究しようというのが本研究の目的である。 本年度は試験研究のために消費者データを入手して、次のような予備的な解析を行った。消費者と製品を空間にマッピングする方法として、マーケティング・サイエンスで最もよく利用されているのがコレスポンデンス分析である。消費者と消費者の間の距離、製品と製品の距離をそれぞれ同一相内の距離というなら、消費者と製品との距離は2相点間距離となる。このような基本的な距離でさえ、従来の統計モデルでは合理性のある距離測度を導くことができなかった。本年度は2相点間距離について新しい測定法を研究して提案を公表した。 連続空間内での消費者の魅力を分析するためには、空間統計学のアプローチが必要になる。本研究への応用法と有効性について試験中である。また分析データに関しては消費者の意識と行動に関するデータが必要になる。本研究は方法論の研究であるから、分析する製品分野を特定のものに限定する必要はない。新製品の開発が盛んであり、かつ消費者にも関心が高いと考えられる携帯電話に関するデータを分析中である。自然言語を用いた商品評価が重要であるため、自由回答データを分析中である。消費者からの自発的な携帯電話に対する評価は、WEBのプログから収集することもできるが、そのための組織的なデータ収集法とテキストマイニングの方法論はまだ固まっていない。また、今後研究対象とするべき製品カテゴリーにっいても検討を要する。
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