本年度は新しい計量モデルをポジショニングの課題に導入して研究した。消費者には異質性があることから、その認知空間にユニモーダルな分布を仮定することは適切ではない。そこで多峰的な分布でも推定できる地球統計学を消費者の選好分析に適用した。地球統計学は元々が鉱山学の分野で開発され、近年、地価の分布のような地域経済学の分野でも適用が始まったものの、マーケティングの分野では適用研究はまだない。 地球統計学のクリギングは連続空間における回帰内挿の技法である。マーケティング研究において、この方法に実効性があるかどうかを現実の消費者の認知と選好に関する非集計データを用いて実証した。非集計データとは、要約された統計数値ではなく、個人単位でのデータを意味する。海外旅行の旅行先イメージに関するデータから認知空間を作成し、その空間上に日本人観光客の人数を選好度として扱ってマッピングした。クリギングによってアジアの近隣諸国やリゾートアイランドなど複数の峰を持った選好マップを構成することができた。旅行地の現在のポジションだけではなくリポジショニングしたときの旅行者数も予測できるので、学術的な意義だけではなく、産業界の実務にとっても有用な知見を導くことができる。本研究の一部をは平成22年9月に開催された日本行動計量学会第38回大会で発表した。
|