世界23カ国4年・11カ国15年のパネルデータ分析を行った。結果は、(1)総医療費(対GDP)比率は、国民皆保険制度がないほど高くなり、公的医療保険支出(対総医療費)が小さいほど高くなる(2)総医療費(対GDP比率)は、国民皆保険制度の有無・公的医療保険支出比率(対総医療費)・喫煙率・人口1000人当り医師数・1人当りGDP・乳幼児死亡率・平均寿命・65歳以上人口比率等の説明変数で、大半(7〜8割)を説明できるであった。 これは、情報の非対称性がある医療保険分野では、政府が直接に市場を支配した方が、医療費の効率化につながるということである。この結論に至る過程では、分配の平等については考慮しておらず、それを考慮すれば一層、政府の介入が正当化される。 上記のOECDの最大23カ国・15年のデータ分析から、「日本の官製市場民営化委員会の意向通りに、医療保険制度の民営化を進めていった場合、国民医療費削減ではなく、国民医療費増大につながること」が分かる。これは、日本医師会の主張に符合するものである。 また、海外著名研究であるNewhouse(1992)の、「米国医療費の増大は、高齢化・医療保険の普及・医師の増加などでは余り説明できない。米国の医療費の増大の大部分は残差である技術進歩である」という通説を、この結果は、ほぼ完全に否定する内容である。これは、新自由主義の主流派経済学の理論に合致しないが、ノーベル賞受賞者のスティグリッツの「情報の非対称性に関する理論」を実証しているものである。
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