OECD HEALTH DATA 2008から、国数を優先させた20カ国5年データと、期間を優先させた14カ国11年データを作成した。これに基づきパネルデータ分析を行った結果、次の3つの仮説が成立することを実証した。 (仮説1)実質自己負担(保険・公費以外)比率を10%増加させると(例:日本であれば、15.3%を25.3%とする)、総医療費(対GDP)比率は、0.7%~1.4%減少する。実質事項負担比率を、日本であれば1.65倍にしても、総医療費が急減する訳ではないが、一定の抑止効果があることは、P値が0.0000~0.0002であることから明らかである。 (仮説2)公的医療保険支出比率(対総医療費)の項は、係数推定値-0.102、P値が0.000と大きな医療費削減要因となっている。日本の公的医療保険支出比率(対総医療費)は、2003年で81.5%であるが、民営化を進め、アメリカ並の44.5%に引き下げると、それだけで、総医療費(対GDP)比率は8.1%から11.9%へ5割近く上昇することになる。 (仮説3)総医療費(対GDP)比率は、実質自己負担比率・公的医療保険支出比率(対総医療費)・乳幼児死亡率・1人当たりGDP・人口千人当り医師数・65歳以上人比率・喫煙率で、71.4%~79.0%が説明される。 次に、上記で説明力が高いとされた計量モデルを用いて、2055年の日本の医療費(対GDP)比率を予測した。2055年の医療費(対GDP)比率は、現行医療制度を延長した場合11%程度で3%程度の上昇で止まる。この上昇は小さいとは言えないが、国民の合意があれば負担可能である。一方、アメリカ的医療制度に変更した場合、2055年の日本の医療費(対GDP)比率は、16~17%程度と8~9%も急増し、国民の選択肢としてすら提示できないと考えられる。
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