本研究は、消費者の多様なニーズに応えつつ、日本における「安全」で「安心」できる農産物を供給する流通システムのモデルを考案することを目的とし、特殊な農産物の流通を苦手とする卸売市場流通システムの問題点を克服し、日本独自の有機農産物の流通システムのモデルを提案することを考えている。 本年度は、日本における有機農産物の生産に関する研究を文献を中心に進めた。また、平成20年11月24日日本経営診断学会第41回全国大会において「農産物流通における生販直接取引システムの成立条件」というテーマで発表を行った。市場取引と直接取引とのコストを比較しながら、都市近郊における地産地消タイプの流通形態の可能性を検討した結果、消費者の付加価値への理解が進むことが極めて重要な課題であることが明らかになった。海外の流通研究に関しては、アメリカについては、米国ワシントン州農務省日本事務所へのヒアリング機会を得て、米国、特に有機農産物の一大生産地であるワシントン州を中心に農産物、有機農産物の流通状況を把握した。農産物に関しては卸売市場を介さず、パッカー、大規模農家と大規模小売業との取引が主力を占める状況にあり、日本における卸売市場流通との比較研究の意義を確認することができた。また、欧州に関しては、世界的にも有機農産物の消費量が多いドイツの状況を視察した。有機農産物をテーマとしたカンファレンスとして有名な「BioFach2009ニュルンベルグ」に参加し欧州における有機農産物の流通状況を把握した。
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