研究概要 |
本研究を開始した2008年秋、金融危機を契機とした世界的な同時不況以降,今後のグローバル経済の推進力として,BRICsなかでも中国のプレゼンスは恐慌以前にも増して高まっている。現況に日本はどのように対処するのかが今問われている。今後重要となるのは,生産ネットワークのあり方だけでなく,東アジアにおける新中間層の形成とともに,消費市場の地域的広がりと深まりが,急速に進行していることである。このことは日本のロジスティクス企業の経営戦略や政府の政策選択にも大きな影響を与えている。ロジスティクス分野においても,新しい状況に対応したグローバルで戦略的な政策が求められており,政策形成の前提とされてきたいくつかの視点について再検討が必要である。例えば,「東アジア物流の準国内化」も,三角貿易構造を暗黙に前提とした視点から,東アジア経済圏において占め得る日本経済の位置の変化を踏まえたものに豊富化される必要がある。また,国際ハブの動向が,一極の巨大ハブ型から隣接する複数の巨大ハブへの分散化傾向を示す中で,日本の国際ハブ政策を進める基準についても,取扱貨物量の増減を主たる指標とする短期的な競争視点だけではなく,中長期のあり方を展望し得る視点や政策の公準が求められている。日本の地域経済と中国等の経済圏との直接的交流と国際ハブ政策との関連性について,資源の厳しい制約状況下ではあるが,より整合的な展開が望まれる。また、日本と同様に成熟社会と目されるドイツ・オーストリア・フランス等で活動する物流事業者らへのヒアリング調査から日本との比較を行った。 日本港湾の発展方向と採りうる戦略を模索のため、日本国内において成熟型社会にふさわしいロジスティクスシステムを再構築する課題と,東アジアのロジスティクスシステムの中に日本がどのように組み込まれていくのかという政策選択との区別と関連性について,引き続き包括的な検討をすすめていく。
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