本研究の目的は、(1)現代日本の物流システムが直面する成熟化の課題を把握すること、(2)物流システム成熟化過程における港湾機能の変化を検証すること、(3)成熟化プロセスが先行していると思われるEU諸国の物流システム、特に港湾経営戦略に関して日本との比較研究を行うこと、以上を踏まえて、(4)日本港湾の発展方向と採りうる戦略を示すこと、である。 上記(1)(2)については、その大枠について平成20年度に把握・検証を行うとともに、平成20年度後半期に生じた世界同時不況による物流事業者の環境変化を踏まえて、平成21年度も引き続き追加的な調査を行った。(3)については、主に平成20年度におこなったドイツ、オーストリア、フランスにおける口系大手物流事業者および現地貨物鉄道事業者のヒアリング調査を通じて、港湾貨物を中心とした物流システムの特質について、日本とEUとの比較研究を行った。 平成22年度は、以上の調査研究の追加的な検証を行いつつこれまでの調査結果を整理し、1990年代以降のグローバリゼーションの進展とICTの経済システムに.おける本格的導入、その結果進行する経済社傘の成熟化の進展が、物流事業者や世界物流システムおよび各地域の港湾戦略に与えた影響を検証した。また、今般の世界同時不況が、1990年代以降進行していた変化を、一層加速度的に促進する契機となったことを検証した。 さらに今年度は、アジアワイドにおける物流システムの発展方向と、EU地域の物流・港湾インフラの近年の発展傾向を踏まえながら、日本の物流・港湾政策の近年の展開の特徴を検証した。加えて、今後の日本の物流・港湾インフラを中心とした戦略的な政策展開の方向性について検証し、ICT技術の導入を前提としたネットワーク型物流システムの可能性について提言した。その成果の一部は、日本物流学会全国大会、日本港湾経済学会関西部会等の学会、その他の研究会・講演会等で報告するとともに各種論稿として公表した。
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