卸売業におけるその産業特性の考察を、内外にわたる複数の事例及び一次データや二次データを検討することから行い、その構造特性とその変化のメカニズムに関するモデル(取引の連動性モデル)の抽出を行った。そこでは、仕入れ取引と販売取引の仕入れ適応と顧客適応志向から、両取引の収斂が交錯するメカニズムが存在し、その結果として多様な流通機構が生成されることが説明された。 さらに、流通機構全体の変動について考察が進められた。戦後50年の二次データ(物価統計調査報告書、商業統計表、工業統計表など)を用いて、時系列分析が行われている。そこでは、卸売流通構造と小売流通構造の連動関係が考察されている。従来は、日本型流通機構の非効率性が指摘され、その効率化へ向かう中で卸売業の排除や卸売流通を経由しない流通経路の成長が指摘されてきていたが、本研究ではむしろ卸売流通の役割が、日本の流通機構の発展・成長の過程において、変わらず重要な役割を果たしていることが、近年の流通構造の特性でもあるということが示されている。
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