営業担当者は、単なる販売者ではなく、境界連結者としての役割を担う。つまりネットワークを構築したり、維持したりする役割を担うのである。そして企業間ネットワークは、企業が必要な資源を動員する重要なものである。また逆にしがらみとしそ、当該企業の行動を拘束する場合もあり得る.本研究は、これらをバリュー・ネットワークの問題として、営業担当者がどのようにそれを構築・維持しているか存解明することを目的とする。 平成21年度には、理論研究、インタビュー調査など、これまでの研究の成果を、国際学会(The 17^<th> Annual Conference on Marketing and Business Strategies for Central and Eastern Europe)において発表した。日本企業は、ヨーロッパ市場進出に際して、安価な労働力を求めて、中東欧の国々に生産拠点を置いてきた。しかし、中東欧の経済発展に伴い、もはや安価な労働力という利点は失われつつある。にもかかわらず、アセンブリーメーカーとの取引関係を重視し、より安価な労働力を持つ国に工場を移転できずにいる企業が多い。またその打開策の一つとして、いわゆるマザー工場化を志向する場合でも、そのために必要なノウハウが入手可能かどうかは、当該生産拠点がどのようなネットワーク上の位置を占めるかに規定される。このように、ネットワークが経済的に見て合理的な行動を阻害するというのがバリューネットワークの一つの側面である。H21年度の研究の一つの成果は、こうした事例を収集し、学会発表という形で世に問うことができたことにある。また質疑の中でも、多くの有益な意見を得ることができ、今後の研究の方向性を考える上で、極めて重要な示唆を得ることができた。
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