研究概要 |
営業担当者は、単なる販売者ではなく、境界連結者としての役割を担う。つまりネットワークを構築したり、維持したりする役割を担うのである。そして企業間ネットワークは、企業が必要な資源を動員する重要なものである。また逆にしがらみとして、当該企業の行動を拘束する場合もあり得る。本研究は、これらをバリュー・ネットワークの問題として、営業担当者がどのようにそれを構築・維持しているかを解明することを目的とする。 平成23年度には、これまでの研究の成果を、国際学会(5th Annual Global Sales Science Institute Conference,SDA Bocconi,Milan,Italy)にて"How sales person bridged over the structural hole"の論題で報告した。この報告では、産業財商社の営業担当者が、大手自動車部品メーカーの強固なバリューネットワークを切り崩し、一見バリューネットワークの利害に反するような新方式の電子部品の採用に成功した事例を紹介し、分析した。バリューネットワークの再構築を可能にしたのは、取引相手の選定が大きなポイントであった。この点について、当初は、定量的な仮説検証を行う予定であったが、同学会でのコメントでは、その前に引き続き事例を収集し、それをもとに取引相手選定のポイントに関する概念的な整理を優先すべきだという意見が多かった。そこで年度の後半は、この作業を優先させることとし、事例収集と概念整理を行った。 こうした研究の成果をまとめたものが、2012年6月刊行予定(3月入稿)の「産業財営業担当者の認知構造におけるネットワーク・バイアス」(広島経済大学経済研究論集第35巻第1号)である。営業担当者が取引相手を選定する際の認知は、バリューネットワークの影響を受けて、ゆがんだものとなる可能性が高い。どのようなバイアスが生じ、どのような影響が予想されるかということを概念的に整理した。
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