本研究の目的は、先進資本主義10カ国における、各国内の企業業績格差すなわちprofitability dispersionの(1)計測(25年間)、(2)格差規定要因の統計分析・制度要因分析、(3)マクロ会計数値で見たリスク=リターン関係の国際比較を実施することにある。 本年度の研究の成果としては、第1に、予備的な成果として、「国の競争優位の財務分析-日米欧の国際比較-」という論文を公表した。続いて第2に、国際的な学会での研究報告(Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues)を実施し、海外の研究者から多くのコメントをもらった。各国の経済システムの相違が、マクロの利益率格差に影響を与えている点を考えると、多様な国からの参加者と多くのアイデアを交換できたことは、今後の研究進捗において、多いに参考になった。第3に、それらを総合する形で、研究単著『業績格差と無形資産-日米欧の実証研究-』を2009年2月に東洋経済新報社から出版した。そこでの興味深い発見事実としては、グローバルで見て企業間の業績格差は拡大している点、そして国ごとに格差の水準と時系列動向が異なる点をあげることができる。アングロサクソン諸国では、業績格差が大きく、しかも拡大傾向が強くなっている。一方で、非アングロサクソン諸国の格差は相対的に小さい点が判明している。格差の相違を説明するメカニズムを現在、検討中である。格差社会が叫ばれる中、「企業版格差」を計測し、その背後にあるメカニズムを解明しようとする点に本研究の意義があるものと思われる。
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