研究概要 |
平成22年度は、利益格差の決定要因に関する仮説を設定し、統合データを用いた分析を行った。その結果、会計的要因と非会計的要因の双方が、利益率格差を規定している点が明らかになった。会計的要因とは利益平準化の程度である。一方、非会計的要因には、リスクマネー供給の多寡、資本市場のダイナミクス、小規模企業のプレゼンス、マクロの景気循環が含まれる。さちに、分析結果の頑健性をチェックするために、いくつかの追加的な分析を実施した。格差指標(Dispersion Index)の計測方法を変えてみても、結論は変わらなかった。また、説明変数の会計的要因を代替的な変数(利益平準化の代わりに裁量的会計行動を表す変数)にしてみても、同様であった。さらに、会計的要因の影響を受けない営業キャッシュフロー(CFO)ベースのDIを用いることで、非会計的要因が格差構造に与える要因だけを抽出した分析も追加的に行ったが、非会計的要因の影響は依然として統計的にも有意であった。最後に、格差変動の要因分析も行った。そこでも、会計的要因だけでなく非会計的要因が有意な影響を及ぼしていることが示唆された。この分析の貢献は、利益率格差が国・年によって異なるという現象に注目し、その背後に会計的要因と非会計的要因の両方が存在する証拠を提示したことにある。このような発見は既存研究にはないオリジナルなものである。平成22年度のこれらの成果は、American Accounting Association,Annual Meeting(2010年8月4日,米国),Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues(2010年11月9日,オーストラリア)などの国際学会で報告済みである。
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