第1年度は、まずマクロ環境会計の理論について、国連等から公表されているSEEA1993(環境・経済統合勘定体系1993年版)からSEEA2003(同2003年版)に至る経緯を明らかにし、SEEA1993において重要度の高かった環境調整済指標(貨幣評価)の測定がSEEA2003において後退した要因を主として文献研究を通じて明らかにした。同時に、環境調整済指標の現代的意義を財務会計で用いられているアプローチの一つである、「情報セットアプローチ」を用いて説いた。さらに、国連の環境・経済会計における専門家委員会における研究動向の精査を通じて、マクロ環境会計の問題点と今後の展開方向を明らかにした。この成果は、「マクロ会計の展開方向」において纏められている。 次に、ミクロ環境会計の理論研究では、2000年以降の各自治体等による環境会計の取組を再検証して問題点を明らかにするとともに、マクロ環境勘定との統合の必要性を説いた。その際に、政府・自治体の環境会計の核心は、環境行政(政策・施策等)および他の行政(経済政策、地域政策等)の意思決定に組み込まれるべきことを主張した。この点は、「自治体環境行政における環境会計の役割」に纏められている。 以上の研究を踏まえ、来年度以降、最終目的である環境政策の立案に資する環境会計モデルの構築に向け、昨年度遂行できなかった実態調査を可能な限り行うとともに、新たに国際比較(特にオーストラリアとイギリス)の視点も導入し、最終的な研究目的を果たすよう努めたい。中間段階の成果は、以下の共同研究(学会報告)の中で明らかにしている。
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