本研究は、一国または一地域の環境影響と環境改善を識別・測定・伝達するマクロ環境会計システムと、政府・自治体といった各会計主体における環境改善の取り組みを識別・測定・伝達するミクロ環境会計システムとを統合することによって、政府や自治体における環境政策の立案・見直しに必要となる情報を提供する仕組みとしての環境会計モデルを構築することを目的として行なってきた。3カ年の研究の最終年度にあたる本年度においては、昨年度公表した「自治体環境行政と環境会計」という研究において、ミクロ環境会計とマクロ環境会計の連携に関するフレームワークを精緻化するために、(1)政府会計におけるミクロとマクロの連携、(2)環境会計情報の政府・自治体の中核的意思決定への反映および(3)政府・自治体環境会計の地域の森林バイオマス政策への適用という3つの方向へと研究を展開させた。 まず、(1)では、政府会計におけるミクロとマクロの連携について検討し、ミクロの公会計制度自体の調和化の必要性を主張した。このことは、政府・自治体環境会計のベースとなる政府会計の基盤を整備することで政府・自治体環境会計のフレームワークの構築を支援すると考えられる。次に(2)では、英国におけるアカウンティング・フォー・サステイナビリティプロジェクト(以下、A4S)に着目し、その取り組みが公的部門の環境会計と報告に寄与することを指摘した。最後に(3)に関しては、政府(自治体)、企業、住民等、多様な利害関係者が包含される地域において環境会計手法を具体的に森林バイオマス政策にどのように適用すべきかを検討し、本研究における政府環境会計フレームワークの具体化の方向性を明らかにした。
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